つれづれ日記 ー2014 8月ー
NEW! 2014/08/30 <人形と絵画・其の三>
ドガ曰く、「デッサンとはフォルムではなく、ものの見方のことだ」。
これは真理だ。
アウトラインやバルールを正確に合わせる技術がデッサン力ではなく、
対象を「捉える力」と、捉えたものを「表現する力」がデッサン力だ。
ドガにしろ北斎にしろ、この「捉える力」が卓抜している。
きっと与勇輝もそうした一人だろう。
インタビューによると、モデルを使ってポーズを決めてスケッチを描い
て・・・という事をほとんどしないのだそうだ。
多少はするようだが、基本的には印象に残っている人物を、記憶を基に
制作するのだという。
見たままを写す「写実」とはここが違うのだろう。記憶の中で印象深い
ところがクローズアップされ、印象に残らないような箇所は除いていく。
おそらく、そんなプロセスを通過しているのではないだろうか。
但し、印象だけに流されては内省的マスターベーションに陥りやすい。
そこに(自然な)リアリズムが圧倒的に存在するのは、揺ぎない「基礎」
があるからだ。
それもそのはず、元はマネキン会社の社員で、何百何千というマネキン
を制作してきた。
だから、解剖学的な人体把握と人間工学的な重心の掛かりどころなど、
モデルを使わずとも体得しているのであろう。(つづく)
2014/08/28 <人形と絵画・其のニ>
人形の場合、当然ながら立体だ。
平面である絵画のように自由なデフォルメは出来ない。
バスキアの作品に出てくる様な人物をイメージしても、立体にする過程で
どこかに辻褄の合わない所が出てくる。
なので、ある程度は写実的に作る方向性になってくると思う。
しかし寸分違わず作られているデフォルメ無しの蝋人形の嘘臭さときたら!
それに対し、与勇輝の作品は細部は作り込まれていないが、まさにそこに
存在しているようなリアリズム・・・というかナチュラリズムというか。
つまり、細密に現物のままを再現したからリアルになる訳ではないという事
になりそうだ。
これは絵画に於いても言える事で、髪の毛一本一本、シワの一つ一つを、
正確なフォルム・諧調で描いた作品が、止まって固まった様に見える事がある。
丁寧に描いているけどまさに「蝋人形みたいだね」。
逆に(西洋絵画から見れば)デフォルメのかたまりの様な「北斎漫画」の活き
活きとした活写はどうだろう!
与勇輝作品の生命感の秘密も、この辺にありそうだ。(つづく)
2014/08/26 <人形と絵画・其の一>
「与 勇輝」という人形作家の作品集を、図書館でたまたま見つけた。
なんの気無しにパラパラとめくっていたのだが、そのうちに引き込まれていった。
「人形」というと民芸、工芸、あるいはお土産といった「飾り物」といった印象で
全く埒外だったのだが、「これは!」と思った。
動きの流れの「その一瞬」を捉えている。
よく「今にも動き出しそう」という表現をするけれど、まさにその感じ。
で。よ〜く見ると、ディテールはさほど作り込んでない。
顔や手は木綿で仕上げており、布の目がハッキリ分かる。
目や口を作り込んでる訳でもない。指の関節などは少しユルイほど。
比較するなら「蝋人形」。
これは細部を徹底的に作り込んでいる。どころか実在の人物の「型取り」をして、
それにロウを流し込んで制作しているので、まさにリアリズム!・・・
のはずなのだが、止まって固まって見え、嘘くさく安っぽい。
全く「動き出しそう」な生命感は感ぜられない。
これは何故なのか?
これから考えていきたい。(つづく)
2014/08/18 <グループ展>
8月20日(水)〜29日(金)まで、銀座ギャラリーアートポイント
で行われる「Life展」に参加します。
大人数のグループ展なので、小品(F6サイズ)を一枚のみの出品です。
展覧会の主旨としては「生物」をテーマに、という事なのですが・・・
例によって女の子を描いてしまいました。
ま、女の子も生物の一種でしょ?という事で。
作品の出来としては、ん〜、ちょっとコッテリ、そして暗めになってし
まった。
偶然性により「黒の溜まり」が出来るんです。墨がこびり付いてしまう。
それが、ちょうどイイ感じになることもあるし、最も理想的なのは良い
意味で「そう来たか!」となる時。
で、一番困るのが「ヨゴレ」に見えて汚くなる時。
そういう時は、なんとかソレを処理しないといけなくなる。
その過程で絵が、どんどんコッテリしてきて、全体も暗めになってしまう。
水彩主体で描いてるので、これは仕方ないですね。
ただ、対処法も考えて行こう。何かあるかも。
つれづれ日記 ー2014 7月ー
2014/07/28 <個展>
個展が無事終了しました。
前回の個展から準備期間が二ヶ月もなかったので心配だったけど、
なんとかカッコはついたかな。
そもそも予定しておらず、コンペで1位になったことで急遽決まっ
た事なので、初めは自分でもどうなる事かと・・・。
ま、少し過去作品も展示して間に合わせた部分はあるけどね。
あと、初の試みとして「ドローイング」の展示をしてみた。
それも、あえて額装やパネル貼りはせず、ペラの原画を平台に置い
て「手に取って観てください」と。
これがソコソコ売れたので良かった。
気軽に買ってほしいという気持ちがあるんです。
なんというか、そんなにウヤウヤシクお買い上げになるんじゃなく。
とにかく「最初の一枚」を買ってみてほしいという。
例えば四季折々の花を生けるように、
部屋に絵を飾ってもいいんじゃないですか?
2014/07/19 <レセプション>
夜からレセプションパーティーが行われた。
体調を崩されていたコレクターの山本冬彦さんも来てくださり、
とても嬉しかった。
パーティーは普段はあまりやらないんです。
何故かと言うと、一人も来なかったらメチャクチャ凹むから。
会期中には、忙しい中なんとか時間をヤリクリして来てくれる知人でも、
日時を指定されると、都合をつけるのがなかなか難しいだろうと思う。
私も、他の作家の個展のときに、ついつい最終日ギリギリに駆け込むことが
よくあるし。
そう考えると、時間が動かせない演劇やバンド系の人達ってたいへんだよね!
来てくれるだけでも有難いのに「この日のこの時間に必ず来い」なんて、とても
じゃないけど言えないよ。
ま、今回は二階で展示をしていた二人と合同開催だったので気が楽だった。
改めて、お越しくださった方々ありがとうございました。
2014/07/15 <個展用タブロー4>
今回の個展のためのタブローとしては最後の作品。
これには(珍しく)実在するモデルがいます。
固有名詞をもったモデルがいる。例えば「山田花子」さんという対象がいる。
そんなこと「当たり前」と思われるだろうが、実際には少し違う。
どういう事かというと「肖像画」になってしまいがち。
私の描こうとしているのは「記憶の中のひと」の図像で、肖像画とはちょっと
違う。
それから、実在するモデルを描くと「私こんなに目、ちっちゃくない!」とか
「こんなに太ってない!」とか・・・そういう事を言われたこともあるし、
言われなくても「言われるんじゃないか?」とか「ちょい奇麗めに描かないと」
とか気を使っちゃうんです。
そんなこと無視すればいいじゃんと、端から見てる分には思うでしょうが、
モデルと「一対一」で対峙するとき、それは案外むずかしいのです。
私の尊敬する竹内栖鳳も「生身のモデルは気を使うから・・・」と、人物を
あまり描かず、動物を多く描いてますが、少し分かる気がします。
そんなことの一切合切を理解してくれるモデルがいたら、是非とも描きたい
のはヤマヤマなんですが。
2014/07/14 <個展用タブロー3>
個展用の小品タブロー。
けっこう上手くいった。
もう全然描き込んでないのだけれど「絵になってる」と思う。
最初の墨描きの段階でほぼ完成。
普段は乾いてから加筆部分を考えるのだが、特に加えなくてもイケるな、
と思った。
若干、明度と色味の調整をするに留めて完成とした。
たまにこういう事がある、偶然の産物。
毎回こんな調子で、チマチマ描き込まずに「全体感」で絵が成り立てば、
理想的なんだけどな〜。
(ま、そうなったらなったで描き込みたくなるのかも?)
2014/07/13 <個展用タブロー2>
今回の個展ではドローイングをある程度「展示していこう」と考えて、
その制作もしてきた。
が、ドローイングだからといって、全て展示可能なわけではない。
さすがにこれは「人前に出せないよな」というのもある。
そういったものはボツにする。
ボツにするんだが、ただボツにするのも勿体ないので「どうせNGなんだ
から、えぃ!」と、さらに手を下すことがある。
飲んでいたお茶をぶっかけたり、絵具をドバッとたらしたり。
右の絵はそうやって出来た。
途中までは全然ダメだったんだけど、最期に墨を一面に塗って、半乾きの
時に拭き取った。
すると、全体がグレイッシュになって「案外いいんじゃない?」という感
じになったので、急遽「タブロー」に格上げした。
ま、良いか悪いかは、鑑賞者の方々が判断してください。
ワタシはまぁまぁイイんじゃないかと思ってます。
2014/07/11 <個展用タブロー>
個展用のタブロー。
タブローになるとつい、チカラが入っちゃうなー。
やはり固くなってしまった。
途中の段階ではドローイング的なおおらかさがあったんだけど、
裏を返せば「ラフ」にも見える。
タブローで、あんまりラフなのも如何なものか?と思い、つい
つい描き込んでしまう。
まずは目を描いたのだが、そこだけ描き込むとバランスが悪い
ので鼻も、そうすると口も・・・となっていく。
髪の毛なんかは全然描き込んでないんですけどね。
ま、そのギリギリの均衡の所で筆はストップ!
隅から隅まで描き込むのはダサイからにゃー。
とにかくその「落としどころ」を探るのが、悩ましくも楽しい。
2014/07/09 <個展用ドローイング2>
個展用のドローイング第二弾。
意図したものとは全く違う仕上りになったけれど、ちょっと面白い
感じのが出来た。
ほとんど真っ黒い「黒」がなく、全体的に白っちゃけてるんだけど、
それでも絵になってる。
構図的には大きく入り過ぎててイマイチだけど。
描いてる時は、もっと明暗がハッキリしていたんだけど、乾くと薄
くなってしまった。
水をジャブジャブ使って描くので、乾くと全く違ってしまうことが
よくある。
普段は「アチャー!」ってなるんだけど、今回はこれが面白い方に
転がったかな。
まぁ「まとめ」てないので、そういう所はイイ感じ。
今回は、なるべく固くならずに仕上げるのが目標です。
2014/07/06 <個展用ドローイング>
個展用の作品をぼちぼち作り始めた。(遅い!)
今回は「ドローイング」も展示しようと考えている。
ドローイングは楽しい!
リラックスして描き始められる。
ま、失敗してもいいや〜。というくらいの気持ちで。
タブローだと「おし!」って気合いが入っちゃうんですよ。
で、失敗しないように失敗しないように・・・と固くなってしまう。
そして、完成間近になると守りに入って、まとめようとする心理がはたらく。
その点、ドローイングはダメならポイしちゃえばいい。くらいの気持ちで始
めるので、のびのび描ける。
それに、終盤になって「エイッ!」って、わざと絵を壊すような事をしてみ
たり。
ま、失敗に終わる事の方が多いんだけど、たまにその「壊し」が思わぬ効果
を産んだりする。
右の絵では、左目の辺りの傷みたいなシミがそれ。
計算ではできないよね、あんな所にシミを作るなんて。
ま、ちょっと暗くて怖い印象ですが、自分としてはけっこう気に入っている。